──ガーランドの歌を再現するため心掛けたことは?

「彼女の歌い方のスタイルに可能な限りなじもうとした。いかに歌詞の一行一行を歌い込むかを徹底的に分析したの。呼吸方法や、母音の代わりに子音を強調し、音符を切らず最後まで歌い切り次の音符につなげる点とか工夫をしたわ。彼女の自然な歌い方で、時代によっていろんな歌い方をくぐりぬけ、後期にはそれが溶け合ったスタイルになった。それが私なりの彼女の歌の解釈なの」

──演じて自分で満足できる瞬間はありましたか。

「この経験を積めただけで十分に幸せなの。毎日がジュディを賛歌する経験だった。いったん映画が完成すると、いろんな人から賛辞をもらい感激もひとしおよ。制作中は多くの人が見るんだということを忘れがちだけど、映画は見る人に多くの影響をもたらす。そこには大きな意味を感じるわ」

──あなたにとって重要な存在のヒロインは誰ですか? 尊敬する人は?

「たくさんいるわ。でも多くはエンターテイナーではないの。ミュージシャンや政治家。ナディア・コマネチがナンバーワンかしら。跳馬のバランスの女王のコマネチ、彼女の演技こそまさにリアリティーテレビだったわ。あとジミー・カーター元米大統領が好き。彼は善良な人だと思う。素晴らしい政治家だと」

──ガーランドの人生は悲劇的でしたが、彼女が生き方を変えていたら救われたと思いますか?

「何度も繰り返し、考えたわ。彼女の歩み、若いころから彼女の人生を振り返ってみた。当時の女性に対する考え方など、いろんな要素が彼女の人生に影響したと思う。若いころは周囲の人が彼女の人生の決定権を持っていた訳だし、それに従うしかなかった。彼女が自分の意思で変えられたかどうか、判断するのは不可能だわ。現代の子役だったら状況は違っていたと思うわ。人生の苦難が、ある意味、彼女のアートの源でもあった。そのせいで彼女の作品が、私たちの心に長い間、余韻を残すような重みを持つことになったのだと思う」

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