停泊するダイヤモンド・プリンセス号 (c)朝日新聞社
停泊するダイヤモンド・プリンセス号 (c)朝日新聞社
ダイヤモンド・プリンセス号の客からのSOS (c)朝日新聞社
ダイヤモンド・プリンセス号の客からのSOS (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスが国内で広がっている。神奈川で最初の死者が出て、和歌山では院内感染が明らかになった。水際対策では食い止められず、すでに蔓延している可能性がある。自分の身を守るためにも、正しい情報を見極めていただきたい。

【写真】ダイヤモンド・プリンセス号の客からのSOS

(1)クルーズ船を停泊させた対応は正しかったのか?
 政府は乗客の感染が判明したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を2月3日以降、横浜港沖で停泊させた。その結果、200人超の感染者を出すことになった。

 一方、イタリアは地中海のクルーズ船を、一時停泊させたが、12時間後に乗客全員を解放している。厚生労働省は14日から80歳以上で持病のある人など、一部の高齢者の下船をようやく認めたが、対応の遅れを露呈した形だ。

 川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦医師が言う。

「クルーズ船の中は中国・武漢のような事態になっている。船内感染ともいうべきで、早急に解決する必要がある。閉じ込めたことで新たな感染が続く可能性は高い。感染しなくても高齢者の持病の悪化や、心筋梗塞(こうそく)や高血圧、脳出血のリスクが増し、拘禁による精神的な症状も出てきます」

 海外メディアからも「感染の第二の震源地をつくった」(米ABCニュース)などと批判を浴びた。

(2)官邸主導の水際対策は被害を拡大させたのでは?
 そもそも国内で感染が広がっていないことが前提で行われるものだ。ナビタスクリニック理事長の久住英二医師があきれる。

「国内ではすでに感染は広がっており、水際対策が無意味なのは明らかです。感染症に詳しい人が誰一人いない官邸が主導して、墓穴を掘った格好です」

 官邸主導は2009年の新型インフルエンザが流行したときに始まった。危機管理の甘さを危ぶむ専門家も多い。

(3)日本で感染はどこまで拡大するのか?
 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が指摘する。

「国立感染症研究所は新型インフルエンザが流行した場合、一人の感染者が首都圏の電車に乗れば10日目に12万人に拡大するとシミュレーションしています。武漢では昨年12月中旬にはヒト・ヒト感染が起こっていたことが確認されていますが、日本で入国制限など水際対策を強化したのは2月1日です。1カ月半も無防備な状態だったことからも、すでに感染者がどんどん拡大し始めていると考えるべきです」

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