お台場で始まった水質改善のための砂の投入=2月8日(c)朝日新聞社
お台場で始まった水質改善のための砂の投入=2月8日(c)朝日新聞社
お台場海浜公園に設けられた会場を泳ぐマラソンスイミングの選手たち=2019年8月11日(C)朝日新聞社
お台場海浜公園に設けられた会場を泳ぐマラソンスイミングの選手たち=2019年8月11日(C)朝日新聞社

 2020年東京五輪まで半年を切った2月8日、東京都がお台場海浜公園(港区)に覆砂(ふくさ)の投入を始めた。砂浜は神津島産の砂で、水底に浮泥が堆積(たいせき)する水域にも同じ砂をまく。都港湾局によると、3月末まで計1万1千立方メートルを投入し、アサリなど二枚貝の生息域を広げて水質改善を目指す。

【写真】会場を泳ぐマラソンスイミングの選手たち

 お台場は水泳(マラソンスイミング)とトライアスロンの競技会場。昨夏のテスト大会で選手から「トイレ臭い」と苦情が出ていた。本番では三重の水中スクリーンを設置し、大腸菌類が侵入しないように囲い込みも図る。

 覆砂について、榎本茂・港区議会議員はこう話す。

「やらないよりも、やったほうがいいです。ただ、比重の重い砂は水底の泥のなかに吸い込まれます。泥を取り除かない限り、ふたをすることにならないのでは」

 東京湾の水質は昭和初期まできれいだった、と榎本区議は言う。だが、東京に人が集まり、高層マンションなどが立ち並ぶようになったなか、生活排水などの下水処理が追いつかなくなった。昔は大切な肥料として農家が買っていた糞尿(ふんにょう)も、現在は下水道に流されている。

 例えば芝浦の下水処理場は1931年にできた施設で、「処理能力はそのときのまま」と榎本区議は話す。しかも、東京は生活排水や雨水なども1本の下水管に流す「合流式」。雨が少し多く降ると、下水処理能力を超える。

 このとき、鉄格子のようなもので大きなゴミを除き、塩素消毒するぐらいの簡易処理で東京湾に流す。台風やゲリラ豪雨になると、簡易処理も省略されるという。生活排水と雨水を「分流式」にするには、都の試算で10兆3千億円かかり、50年を要する。

「東京湾に流している排水は晴れている日にはすべて処理している」と都大会準備局の担当者は話す。お台場の水質は天候に大きく左右されそうだ。なぜ、お台場開催なのか。「レインボーブリッジとか東京湾の景観など、テレビで絵面がいいところだからです」と榎本区議はみている。

 大会開催が夏なのは、国際オリンピック委員会が巨額の放映権料を払う米テレビ局に配慮し、欧米の人気スポーツのシーズンと重ならないようにしているためだ。だが、日本ではゲリラ豪雨の時期と重なり、お台場の水質が悪化しやすい。「ビジネスファースト」の五輪が、東京の下水処理問題を明らかにした「功績」は小さくない。(本誌・浅井秀樹)

*週刊朝日オンライン限定記事