「わーくはぴねす農園」は10年、千葉県市原市でスタートした。エスプールプラス社が障害者と作物作りを指導する管理者を募集して、企業に紹介する。雇用した企業は農場の一区画を借りて障害者の「働く場」を確保し、福利厚生事業として野菜を生産する。現在、千葉、愛知、埼玉の3県に18農園がある。今年1月の同社調べでは287社以上が利用し、就職人数は1671人以上。継続率は92%に上るという。

 障害者雇用促進法は企業や行政に一定の割合で障害者を雇用することを義務付けている。企業の障害者の法定雇用率は18年に2.0%から2.2%に引き上げられ、来年4月までに2.3%になる。雇用率が達成できない100人超の企業は、不足する障害者1人当たり月5万円(200人以下は今年度中に限り4万円)が徴収され、達成したときは超過1人当たり月2万7千円が支給される。

 厚生労働省によると法定雇用率を達成している企業の割合は48.0%(昨年6月1日現在)。過半数の企業が達成できていない。

「わーくはぴねす農園」に参画するラコステジャパンの人事最高責任者・高村竜也さんは言う。

「障害者雇用は採用後にも課題があります。一般的なオフィス環境では担当していただく業務が限定され、単純な作業を長く続けるのはモチベーションの維持が難しい。周りの社員の精神的なケアも必要です。企業の仕事の中から切り出しするのではなく、福利厚生と農業をつなげることで働く楽しさが生まれています。作物を作る農業は根源的な生業で、クリエイティブな要素があり、食べるよろこびを共有できます。届けられる野菜は本当においしい。社員にも好評で、感謝の気持ちを伝えるカードを農場に送るなど、ポジティブな連携が生まれています」

 行政との連携も進む。愛知県の豊明市、みよし市、春日井市、東海市に加え、昨年2月にはさいたま市と障害者の就労機会拡大に関する協定を結んだ。10月、「わーくはぴねす農園 さいたま岩槻」の開園式で、清水勇人市長がこうあいさつした。「障害のある方が、本当に元気いっぱいに笑顔で働いている姿を見せていただきました。これからも生き生きと働き続けられるようにしっかりとサポートし、見守っていきたい」

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