睡眠障害は膀胱や尿量の問題ではなく、眠りが浅いとちょっとした尿意で目覚めてしまう、というもの。睡眠障害があるとトイレに起きやすく、トイレに起きる回数が増えれば、眠りが妨げられるという悪循環となる。

 これらの原因のうち、セルフケアで改善が期待できるのは、夜間多尿や睡眠障害による夜間頻尿。自分がどのタイプに当てはまるかは、「排尿日誌」でわかる。

 排尿日誌とは、朝起きてから翌日の朝までの排尿回数と尿量を記録するもの。尿量は計量カップや紙コップ、500ミリリットルのペットボトルを半分に切ったものを使って測る。日誌で「1日の尿量が1200ミリリットル。夜間の尿量が500ミリリットル」だとしたら、夜間の尿量が1日の尿量の3分の1を超えているので、夜間多尿の可能性が高い。日誌は排尿の傾向を見るものなので、2~3日でOK。連日でなくてもよいという。

 では、どんなセルフケアがよいのだろうか。高橋さんが実施した検証で有効性が示されたのは、「塩分を控える」「夕食の時間を早める」など五つだ(下記参照)。

「塩分を控えることでのどの渇きを抑え、水分のとりすぎを防ぎます。夕食にもかなり水分が含まれているので、食事時間を早めれば尿が作られる時間も早まります。運動や入浴は一見、排尿と関係なさそうですが、実は重要な要素です」(同)

 運動によって足を動かすと、ふくらはぎのポンプ機能が働く。入浴では浴槽につかることによって水圧が足にかかる。いずれも下半身のむくみを改善する。汗をかいて体内の水分量が減れば、尿量を少なくすることができ、睡眠の質を高めることにも役立つ。

 寝る前の排尿は、膀胱にたまっている尿を出しておくという点で重要だ。

 高橋さんによると、こうしたセルフケアを続けていけば、1週間ぐらいで効果を実感できるそうだ。

「夜間頻尿は、高血圧や糖尿病、肥満、睡眠時無呼吸症候群、心不全、脊柱管狭窄(きょうさく)症、前立腺肥大といった病気が原因で起こることもあります。セルフケアだけで改善できない場合は、一度、泌尿器科で相談してみましょう」(同)

 なお、難治性の夜間頻尿については、昨年6月にデスモプレシン(商品名ミニリンメルト)が新たに保険適用となった。もともと小児の夜尿症に用いられていた薬で、現在は男性に限って使うことができる。(本誌・山内リカ)

■夜間頻尿を改善するポイント
・塩分摂取を控える
・1日30分程度の運動(ウォーキングなど)
・入浴
・夕食を早めにとる(就寝3時間前まで)
・寝る前にトイレに行っておく

週刊朝日  2020年2月21日号