排尿障害を専門とする日本大学医学部泌尿器科学系主任教授の高橋悟さんは、「夜間頻尿の原因は大きく三つ」と話す。それは、膀胱(ぼうこう)が尿をためにくくなる膀胱容量の減少、夜間の尿量が増える夜間多尿、そして睡眠障害だ。

「まず、膀胱容量の減少ですが、加齢に伴って膀胱の組織が変化して、少量の尿しかためられなくなります。また、排尿する力が落ちて1回で全部の尿を出しきれなくなってきます。そのため昼夜問わずトイレが近くなります」(高橋さん)

 夜間多尿は、夜間の尿量が1日の尿量の3分の1を超えた状態をいい、水分のとりすぎと、それ以外の要因に分かれる。

 前者については、最近は脱水予防などの観点から、水分を多めにとることが推奨されているため、なかには必要以上に水分をとっている高齢者もいる。これが夜間多尿の原因になることが少なくないという。

 後者では抗利尿ホルモンが関係するものと、むくみが関係するものがある。

「抗利尿ホルモンとは尿が作られるのを抑えるホルモンで、睡眠中に分泌されます。若いときはこのホルモンが十分に分泌されているので夜中にトイレに起きることは少ないのですが、年をとると分泌が減ってきます。その結果、夜中も日中と同じように尿が作られ、夜間頻尿になります」(同)

 一方、むくみとは体内の水分が余分にたまった状態。夕方になって足がむくむのは、重力によって体の水分が下半身にたまるからだ。年をとると水分を心臓に押し戻す力が弱くなるため、むくみやすい。

 昼間、体を起こしているときに下半身にたまった水分は、睡眠中に心臓や腎臓に戻ってくる。下半身と心臓などの高さが同じになるからだ。戻ってきた水分は尿として排泄(はいせつ)されるので、特に夜間に尿量が増える。

「患者さんのなかに、こちらが『水分をとりすぎていませんか』と聞くと、『トイレが近いから、夕方からはほとんど水を飲まない』とおっしゃる方がいます。そういう方に排尿日誌(後述)を付けてもらうと、昼間は1回しかトイレに行かないのに、夜間は4回も5回もトイレに行っているんですね。まさにこういう方がむくみによる夜間多尿タイプといえます」(同)

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