ワタクシは、どうやら、そろそろ、あちらへ出発との予感がしてきました。

 百歳のお祝いの相談などを、早々としにくる人々が増えたので、我乍(われなが)らいささかあわてています。

 墓は、徳島と、東北の天台寺にすでに用意があるのですが、京都は寂庵にもほしいと言い出されて迷っています。

 ヨコオさんに略図を書いてもらったのがあるので、寂庵は、あの形式にしようと思います。

 外出したので疲れましたが、寂庵の外へ出るのは久しぶりなので、もう春めいてきた京都の春の気配を、全身に感じ、うっとりしました。病院はマスクの人たちばかりで、ほとんど顔が見えません。

 中国に発生した新型肺炎が日本にもうつり、世の中ではみんなマスクをつけて顔が見えません。ヨコオさんは、すぐはやり病にかかる体質なので十二分に気をつけて、目だけのぞくマスクなど奥様に造ってもらっておつけなさい。

 からうつるかもしれないから、猫にもマスクつけてやりなさい。

 それより、お好きな入院をして、病院で絵を描いているのが、一番安全かもしれないですね。

 ヨコオさんがTELされた最近の美輪明宏さんが、とてもお元気だった由、嬉(うれ)しくなりました。

 神秘的な美輪明宏さんは、東北の天台寺まで、何度もいらして下さいました。

 私が数えきれない参拝者に「生きた観音さまがいらっしゃいました」と告げると、三宅一生の黄金色のスケスケドレスを身にまとった美輪さんがしずしずと現れます。参拝者は「ワーッ」と叫んで、全身をゆさぶり、生きた観音さまをお迎えするのです。

 美輪さんの全身から金色の光りが放ち、ホントの観音さまとしか思えません。全くマカフシギな人物です。

 天台寺でお祭りしている南朝の長慶天皇の御霊が美輪さんに度々あらわれるそうですよ。

 あっ、そうだ! 私の葬儀委員長、美輪さんに頼んでみようかな?

 夢のようなことを本気でやるのが芸術家なのですよね。ヨコオさんも美輪さんも、ワタクシも、だからホン者の芸術家なんですよ、ねえー。

 また、ね、では。

週刊朝日  2020年2月21日号