これまでは、保険に加入できる年齢は、シニア犬とされる8歳前後あたりまでが多かったようだが、ペット保険の大手「アニコム損害保険」は昨秋、加入時の年齢上限を設けない、8歳以上が対象の保険の販売を始めている。

「往診獣医アニドック」(東京)の獣医師の天野謙一郎さんはこう話す。

「ワンちゃんも高齢になると慢性疾患も増え、薬代など月々の医療費も高くなりがちです。しかしこれまで、多くのペット保険の加入や更新には年齢制限がありました。いま、ペットも高齢化の時代で、シニア犬をターゲットとした商品が出てきました。ペット保険に加入されている方は、保険でカバーできるという考えがあるためか、最初の段階からしっかりとした検査を選びます。原因究明を早い段階で行うことができ、結果的に早期治療につながっていると思います」

 動物病院の現場で一番大変なのは、「触れられない犬」だという。

 日本獣医生命科学大学獣医学部准教授の水越美奈さんはこう指摘する。

「犬も長寿化したことで、しつけが重要になってきます。どこで、誰に触れられても大丈夫なようにしておかないと、治療だけでなく、おむつ交換もできません。自力でご飯を食べられなくなったときも大変です。小型犬を飼っている人の中には、しつけは必要ないと思っている方も多くいらっしゃいますが、それは間違い。しつけこそが長寿の秘訣(ひけつ)なんです」

 また、入浴はおろか、トイレにも行けないほど飼い主にべったりで、ひとりでお留守番もできない「分離不安」の室内犬も問題。その場合、まずは何かに集中する練習をさせて、飼い主も「私たちがいないとダメだから」と余計な心配をしないことが大事だという。

「犬と共依存になってしまうと、災害時などに預けることができなかったり、入院治療が難しくなったりで大変です。そのためにも、ワンちゃんが、獣医師など他人に対しても平気でいられるようにしつけておくことが大事です」(水越さん)

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