デマを信じたり、患者を差別したりすることはやってはいけない。

「不必要な騒ぎなのは、中国人を拒む店が出てくるとか、SNS上にデタラメな情報があふれていることです。デマが多く、中国の陰謀だとか、生物兵器だとかといった情報が出ています。ツイッターにもパニックをあおるようなフェイク情報が非常に多い。こうした現象は世界中で起きています。特定の国や民族に対するバッシングはまったくナンセンスで、社会倫理にも反します。患者さんに対して、『帰国させるな』といったネット上の意見もありますが、論外です。私も海外生活をしましたが、外国で病気になるとものすごく不安になります。中国の病院は日本とシステムが違いますし、医師や看護師との会話もうまくいかない。そういうなかで入院するのは大変なことです。同じ立場になったらどう思うのか考えて欲しい。遠くから石を投げて喜ぶような行為を病気の人にやるのは許し難いことです。相手が弱っている時には、手を差し伸べるのが当然です」

 しばらくは続きそうな今回の騒ぎ。不安にならないための鉄則を専門家への取材をもとにまとめた。

○過度に恐れない
新型コロナウイルスは国内では流行していない。普段通り生活していれば、人から人にうつる可能性はまずない。

○正しい情報を得る
ネットでは恐怖をあおる言葉が飛び交う。東京五輪が中止になるといったデマも広がった。行政や報道機関から情報を得よう。

○焦って買いだめしない
マスクなどが全国的に品薄になっている。今の状況でマスクをしても予防効果は低い。手洗いなど通常の風邪対策で十分だ。

○感染者らを差別するな
感染者を怖がり隔離を求める声がある。現状では感染は限定的で心配ない。中国人観光客への過剰反応も避けよう。

○体調が悪い人に思いやりを
感染症対策で必要なのは自宅療養。会社や学校を休みやすいように配慮する。みんなで支え合う社会は病気に強い。

 緊急事態の時には社会の本当の強さが試される。一人ひとりが冷静に対応して、少しでも早く収束させたい。
(本誌・池田正史、亀井洋志、多田敏男)
※週刊朝日オンライン限定記事

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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