医療の専門家は過度に心配する必要はないという。

 感染症や旅行医学に詳しいナビタスクリニック理事長の久住英二医師は、これからウイルスの病原性が強まることは考えにくいという。

「インフルエンザでは日本だけで毎年1万人くらい亡くなる。いまのデータから全体像を推定していくと、そんなにパニックにならなくてもよい病気の可能性があるのです。もちろん高齢者や持病がある人は、インフルエンザと同じように重症化する恐れがあります。具合が悪くなってもきちんと治療を受けられることが分かれば、安心につながる」

 このように指摘し、行政が行き過ぎた対応をしないように訴える。

「2009年の新型インフルエンザの時に日本では感染が疑われる人をホテルなどに停留させ、欧米諸国から人権侵害ではないかと指摘されました。それと同じようなことがいま、行われています。国内でツアー客からうつったといわれているバスの運転手もいますが、はっきりとは分からない。武漢から来た人から直接うつったのなら1次感染ですが、実際は2次、3次感染になっている可能性がある。武漢からのツアー客を乗せたバスやタクシーの運転手は、全国にどれだけいるのでしょうか。武漢からの帰国者を全てチェックするのなら、日本全国の運転手もチェックしろという話になりかねません。行政のやっていることには一貫性がないのです」

 神戸大学大学院医学研究科・感染治療学分野の岩田健太郎教授はこう述べる。

「どこが騒ぎどころで、どこが慌てなくていいのかが区別できずパニックになっている感じがします。情報をきちんと区別し、怖がるべきところとそうでないところを明確にすることが大事。一般市民は特別なことをする必要はなく、マスクも予防にはあまり役立ちません。飛沫(ひまつ)はマスクの隙間からも入り込むし、手洗いも効果は限定的です」

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みんなが落ち着いて行動することが収束につながる