全日本柔道連盟では、脳振盪を起こした選手については医師が診断し、症状がある場合、症状が消えるまで練習・試合は休止させる。急性硬膜下血腫などになった場合、新たな脳振盪で重症になる恐れがある「セカンドインパクト症候群」を危険視し、競技復帰は勧めていない。

「4年ごとに国際スポーツ会議が実施され、そこで医学論文などを検証し、選手がより安全にプレーできるようルール改定も行われます。また、日本で行われたラグビーW杯後は、様々な角度からの映像を検証し、危険なプレーが新たに見つかれば禁止されるでしょう。選手が安全に長くプレーできるように、安心して子供にスポーツをさせられるように、今まで以上に安全に注意を払う傾向がスポーツ界全体で高まるでしょう」(前出・川村医師)

■家庭でもできる三つの簡単予防法

 それでは、まだ安全対策が確立していない時代に接触型スポーツをしていた人たちはどうすればいいのか。「現役を退いて20年も経つから平気」などと考える人も油断禁物だ。

 脳梗塞(こうそく)メディカルリハの理学療法士・梅林遼太氏は、

「脳細胞は死滅すると二度と元に戻りません。ただ、最近の研究では死滅した脳細胞を周囲の細胞が補う働きを持つことが明らかになってきました」

 と話し、脳疾患の有無を確認する簡易的なチェックで、脳細胞の活性化を促し脳疾患の予防にもなる三つの方法を紹介してくれた。

 一つは眼球運動。自分の腕を伸ばし、1本指を立てて目の前に示す。指を様々な方向へゆっくり動かし、頭を動かさずに目で追うことで眼球と直接つながる脳神経を刺激できる。

 二つ目は会話。家族や友人と昔話などをして、記憶を掘り起こす作業だ。1対1から始め、次に複数人による複雑な会話をする。

「目で知覚したスリッパを『スリッパ』という言葉と照らし合わせるのも、脳機能の活性化を促します」(梅林氏)

 最後は自身の全身をゆっくり触り、脳に触覚刺激を与える方法。ゆっくり体を触ることで、足の小指や肩など体の“端”を知覚することを促すという。

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