※写真はイメージです (Getty Images)
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 ラグビーW杯日本大会の影響で、ラグビー熱も高まっている。ただ、気をつけてほしい。激しく接触するスポーツは、脳振盪が原因で脳疾患を発症するリスクもある。今はケアも進んでおり、過度に恐れる必要はないが、過去の脳振盪(しんとう)の影響が数十年後に出るケースもあるという。

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 脳振盪が脳に及ぼす影響を隠し、選手を保護する義務を怠ったとして、脳疾患がある元アメフト選手ら約5千人が、米国のナショナル・フットボール・リーグ(NFL)を訴えた裁判が2016年4月、NFL側が推定総額10億ドル(当時の日本円で約1100億円)を支払うことで和解が成立した。

 一連の問題で最も注目されたのが、脳振盪を繰り返すことで生じる慢性外傷性脳症(CTE)だ。

 日本神経学会によると、CTEは、頭部への衝撃を繰り返し受けることや、脳振盪を反復することで発症する疾患。外傷を受けてから数年から数十年の経過で記銘力低下や注意障害、錯乱、抑うつ状態といった認知症の症状などが起きる。特にボクシングやラグビーなどの接触型スポーツの選手で多くみられるという。

 ただ、CTEの画像診断は、ある程度は可能だが、確定はできない。さらに、現時点では治療法がないため、早期発見で頭部への打撃を回避したり、場合によっては早期の引退に踏み切る指導をしたりすることで、疾患への発症を避けることが重要だという。

 東京慈恵会医科大学脳神経外科の専門医で、関東ラグビーフットボール協会のメディカル委員でもある川村大地医師はこう話す。

「反復的な脳振盪がタウたんぱくという異常なたんぱく質を脳に沈着させ、CTEや認知症などを進行させる疑いがあります。画像診断が実現しておらず、データがないため因果関係がはっきりと証明できませんが、接触型スポーツを原因とする脳疾患の発症を否定できない状況です」

 数々の執筆を手がけ、世界の医療事情に詳しい太融寺町谷口医院(大阪市北区)の谷口恭院長は、こう主張する。

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