現在は、要支援1、2に認定された人たちと65歳以上の高齢者が対象だ。ところが、その実態は、

「地域という実体のないところに丸投げするだけで、実際は介護給付を抑制するためのアリバイ」(上野さん)

 という。

 総合事業の財源は介護保険。だが、国が定めた全国一律の基準で提供するサービスと違い、市町村が独自の事業として行う。そのため、地域格差が大きく、関係者によると、きちんと機能しているところはゼロに近い。

 というのも、総合事業で行っているデイサービスや訪問介護は、介護保険での利用料より単価が安いため、これまで担っていた事業者の多くが敬遠したり、撤退したりしているからだ。そのため、地域の保健師が家庭を訪問したり、体操教室などを公民館で行ったりしているが、事業の担い手となる住民は限られ、行政側もほとほと困惑しているというのが、現状だ。

「国はボランティアでやりなさいと言っていますが、そもそも地域活動はボランティアでやるものでしょうか。実際、ボランティアの人も疲弊していますし、認知症の方に対して、素人がどこまでケアできるのか、という話です」(フリーライターの中澤まゆみさん)

 集会は、およそ3時間続いた。最後に参加者一同が賛同した声明を紹介する。

<政府から出される介護保険改定案は、つねに財源ありき。もちろん、そこから目をそらすことはできませんが、現場の利用者、働く人々の声を政策過程に適切に反映させているかを、見直す必要があります>

(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2020年2月7日号