改正のたびにやり玉に挙がるのが、病気などで家事をすることが不自由になった利用者の代わりに、ヘルパーが食事や掃除、洗濯などを行う「生活援助」だ。

 05年の改正で2時間が1時間半に短縮され、11年の改正では1時間に削られた。

 医師の由利佳代さんは、認知症のケースについて、

「初期の方は要介護度が1、2と低く認定されることが多く、家族の介護やケアの負担が軽くはない。感情労働(肉体労働とは違い、感情の抑制や、緊張、忍耐などを必要とする労働)を24時間強いられている」

 と話す。また、NPO法人アビリティクラブたすけあい理事の山木きょう子さんも、

「国は要介護1、2を“軽度”としていますが、決してそうではない。要介護1、2の認知症の方は生活援助がなければ暮らせない」

 と語る。

 20年は6回目の改正の年にあたる。

 昨年、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)で審議されていたのは、「ケアプラン(居宅介護支援費)の有料化」や「要介護1、2の生活援助の地域支援事業への移行」「2割負担、3割負担の対象者の拡大」「補足給付の見直し」「高額介護サービス費の自己負担額の上限引き上げ」などだ。

 このうち、世論の反発を予期した審議会の委員からの反発があり、ケアプランの有料化などは今回見送られた。だが、補足給付の見直しと高額介護サービス費の自己負担額の上限引き上げは、実施される可能性が高いという。

 補足給付とは、低所得者が施設を利用したときにその負担を介護保険から補てんするもので、05年の改正で作られた。その対象者が今回狭まり、年金月額10万円超の人では給付が減る。そのため、該当する施設入居者は食費を2万2千円多く自己負担しなければならなくなる。

 一方、高額介護サービス費は、医療保険の高額療養費と同じで、自己負担額が一定以上になったときにそれを超えた分のお金が戻ってくるシステム。この世帯上限額がこれまでは現役並みの所得(年収約383万円以上)で4万4400円だったのが、4万4400~14万100円になる。

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