トリの寄席も無断欠勤? 一之輔が「逃亡」の果てに気づいた仕事観 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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トリの寄席も無断欠勤? 一之輔が「逃亡」の果てに気づいた仕事観

連載「ああ、それ私よく知ってます。」

春風亭一之輔週刊朝日#春風亭一之輔
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『春風亭一之輔のおもしろ落語入門 おかわり!』(小学館)が絶賛発売中!

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『春風亭一之輔のおもしろ落語入門 おかわり!』(小学館)が絶賛発売中!

イラスト/もりいくすお

イラスト/もりいくすお

 熱燗とノンアルで乾杯。「こんなことよくあるんですか?」と不思議そうな運転手。「……逃げたくなることも……あるんですよ……」と私はホロリと涙を流す。「(察して)……一献いきましょう! お客さんっ!」。やったりとったりしているうちに、鍋の〆の雑炊をすすり始めると14時を回っている。本来なら池袋演芸場の高座に上がってる頃。恐らく誰かが穴を埋めてるだろう。罪悪感。ただその後の上野鈴本演芸場は私がトリだ。「本当に行かなくていーんですか? みんなトリのあなたを楽しみにしてるんじゃないんですか!?」「……」「上野だったら飛ばせばまだ間に合いますよっ!!」「……」「あんたには落語しかないんじゃないのかよっ!!」「………うるせえ! おれはアンコウ食いに来たんだっ!! 邪魔するなら帰れっ!」

 真にうけて運転手、本当に帰っちゃった。トリの寄席も無断欠勤の私。夜の草加落語会もこの分だと間に合わない。後は野となれ山となれ、だ……。あ、いや、ここまで書いてきて妄想とはいえ怖くなってきた。いや、だって仕事を黙って抜くなんて怖すぎる。根が真面目、というか臆病なんだな、私……。

 こないだ会った同業の先輩に「君は年に何百回も落語やってるらしいけど、『暇』なのか!?(笑)」と呆れられた。そうか、俺は暇潰しに落語やってんだ! そう思ったらなんか楽になってきた。17日が締め切りのこの原稿も「逃げたい」と思っていたら、なんか書けてしまった23時30分。明日も仕事……否『暇潰し』。やっぱり俺は逃げないぜ。

週刊朝日  2020年2月7日号


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春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめた最新エッセイ集『まくらが来りて笛を吹く』が、絶賛発売中

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