医学部予備校「ACE Academy」(東京)の代表で医師の高梨裕介さんはこう指摘する。

「出願書類の志願票・調査書は、正当な理由なく欠席が多い場合はマイナス点になるといった、総合的な評価に使われるはずでした。ところが配点は大きく、現役男性が合格しやすいように調整も行われていた。出願書類の評価がブラックボックスになり、差別の温床になっていたのです」

 聖マリアンナ医科大は第三者委の結論を拒否し、いまも差別はなかったとの立場だ。

「属性によって結果的に差があるのは事実です。評価する先生の心証で男子や現役生が優遇されたことがないとは言いません。どこまでが公平・公正かというのは非常に難しく、最終的には主観的な部分が占めます。意図的にやったという認識がないので、追加合格させる事案ではありません。過去の調査書類は全て廃棄しているので、そもそも合否の再判定はできません」(大学の担当者)

 自ら依頼した第三者委の結論を、都合が悪いからといって認めない姿勢だ。こうした“開き直り”の背景には、文科省の腰が引けた対応もある。不正が発覚したほかの私立8大学は私学助成金が減額されたが、否認している聖マリアンナ医科大の検討はこれから。萩生田光一文部科学相は1月21日の会見でこう述べた。

「外的な要件で黒だとか白だとか決める性格のものではない。文科省が時間を切ってプレッシャーを掛けて返事をよこせというよりは、大学の自主性を尊重しながら方向性を示してもらえると期待している」

 女子や浪人生への差別的な入試は、ほかの医学部でも行われていた。

 文科省の調査によると、男性の合格率を女性の合格率で割った「男女格差」は、18年度入試で東京医科大では3・11。男性は女性の3倍合格しやすく、「女子だけ狭き門」になっていた。

 ほかにも日本大2・02、順天堂大1・93、昭和大1・49となっており、聖マリアンナ医科大は1・47だった。

 問題の発覚を受けて各大学とも入試制度を見直し、19年度入試では男女格差は大きく縮小。東京医科大0・98、日本大0・87、順天堂大0・95、昭和大0・78、聖マリアンナ医科大0・79となっている。たった1年でこれだけ変わることからも、18年度入試までは女子差別がひどかったことがうかがえる。

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医療界には「女性医師が増えると現場が困る」という古い考え方も