幸い、てんかんは薬物治療が非常に有効で、高い確率で発作を抑えることができる。赤松さんは「特に高齢者の有効性が高く、9割ほど」と話す。

 現在、処方されているものは新しいタイプの抗てんかん薬。レベチラセタム(商品名はイーケプラ。以下同)、ペランパネル(フィコンパ)、ラコサミド(ビムパット)、ラモトリギン(ラミクタール)などがある。いずれも昔に使われていた薬で頻発しためまい、ふらつきといった副作用が出にくい。錠剤で、1日1~2回服用する。基本的には1種類の薬ですむが、効果の表れ方によっては、2種類を服用することもある。

「高齢者は降圧薬や血糖降下薬など、複数の薬を処方されていることが多いですが、こうした薬との相互作用もなく、比較的安全な薬といえます」(同)

 重要なのは、きちんと診断を受け、薬を飲み忘れないこと。服用をやめると発作は再発しやすい。

 てんかんと交通事故で思い出されるのは、12年、京都市の祇園で起こった暴走事故だろう。軽ワゴン車を運転していた男性(当時30歳)が車を暴走させ、男性を含む8人が死亡、12人が重軽傷を負った。11年には栃木県の鹿沼市でもクレーン車を運転していた男性(当時26歳)が交通事故を起こし、児童6人が死亡した。これもてんかん発作が原因だとされた。

 2件とも高齢者が起こした事故ではない。だが、田所さんはこう話す。

「報道されている交通事故では、てんかんという持病があるにもかかわらず、きちんと薬を飲まない人が多い。てんかんは薬で発作を抑えることができる病気なのに、残念でなりません」

 治療の継続や普段の生活においては、家族の関わりが大事になる。

「薬の飲み忘れをしないように、しっかりチェックしてほしい。また、患者さんは発作が起こることにとても不安を覚えていて、家に閉じこもりがちです。最初のうちは一緒に出かけるなどして、薬で発作が出ないことに自信を持ってもらえるようサポートをお願いします」(田所さん)

次のページ