だから、心当たりがあったら医療機関を受診して、てんかんかどうかを調べてみること。状況に応じて、勇気を持って免許証を返納するというのも選択肢だ。

「これは、“てんかんの人は運転するな”ということではありません。診断を受けて治療し、発作が起きないことが確認されれば、再び、ハンドルを握ることはできます」(同)

 てんかんについての啓発活動や相談などを行っている日本てんかん協会の理事、田所裕二さんによると、「2年間、運転に支障が生じる発作がなく、今後、症状が悪化する恐れがないと医師が認めた場合、免許を更新したり取得したりすることができる」という。

「最終的には、適性検査を受けて決まります。気になる点があったら、まずはてんかん治療に詳しい医師にご相談ください」(田所さん)

 続いて診断だが、これは問診と脳波検査から総合的に判断される。特に重視されるのは、本人と家族からの聞き取りだ。

「焦点発作はご本人が気付かないで起こっていることが多い。ですから、ご本人からは、“最近、気付くとあざができている”とか、“違う場所にいる”とかの症状がないかをお聞きします」(赤松さん)

 一方、家族からは、ボーッとしていて家族の声掛けに反応がないときがあるか、ボーッとしているときに口をもぐもぐさせたり、手足をばたつかせたりしていないか、夜にフラフラと歩いて転倒したことはないかといった、周囲が見てわかる異変について聞き取る。

 さらに赤松さんは家族に対し、「てんかんかもしれないと思ったら、やってもらいたいことがある」と話す。

「気になる様子をスマホの動画で撮ってほしいのです。それにより、どんな症状が出ているのか、症状が出ている時間がどれくらいか、私たち医師もリアルに知ることができます。また、てんかんなのか、せん妄などほかの病気なのか、その鑑別もできます」(同)

 繰り返すが、発熱や血圧が高いといった症状とは違い、発作が出ていないときは健康な人と変わりない。そのぶん診断が難しい。早期診断につなげるためにも、スマホの動画が有効なのだという。

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