埼玉県在住の男性(61)は、現役時代にはできなかった「平日ゴルフ」を実現させようと、平日会員のゴルフ会員権50万円と800万円もするスポーツカーを退職金で購入した。

「奥さんは渋い顔をしていたそうですが、『車で一緒に温泉に行こう』と言われると反対する理由がない。しかし、退職金の3分の1を使ってしまうと、残りの2千万円と貯金で月々の生活費の穴埋めをしなければならないため、あせって相談に見えたのです」(同)

 人生で初めて、数千万円単位の残高を見ると海外旅行や車の買い替え、住宅のリフォーム、子や孫への援助など、思いつくまま支出してしまうが、「特別支出」を把握するために藤川さんが勧めているのが「ライフプランシート」の作成だ。市販のノートに、夫と妻の将来かなえたい目標など「ライフプラン」を思いつくまま書き込んでみる。

 例えば夫(60)は、2年おきに、妻と2泊3日でアジアを中心に旅行に行きたいと予定を立てた。一方の妻(58)はサークルの友人たちと近場の温泉にバスツアーに行きたいという希望をもっていた。子ども部屋を改装して妻の部屋にするというので、そのリフォーム代、隔年で車検代、家電の買い替え費を計上したところ、特別支出は5年間で約315万円もかかることがわかった。

 金融資産の残高からイベント費の合計を差し引いた額が、今後の生活費として取り崩せる金額になる。

 人生100年時代、生活費の不足分を計算するときは、65歳で退職したのであれば、35年分は見積もっておきたい。毎月、5万円不足するのであれば、1年で60万円、35年で2100万円かかる計算だ。まずは、生活の不足分を確保して、そのほかにも病気などで入院したとき、介護が必要になったときなど不測の事態への備え、さらには葬儀代を残しておく。

 貯蓄から生活費として取り崩すお金、不測の事態への備えを差し引いた金額が、自分へのご褒美など「特別支出」として使ってもいい金額の目安になる。(ライター・村田くみ)

週刊朝日  2020年1月31日号より抜粋