逃亡を結果的に許してしまった日本の司法当局。とりわけ東京地検は汚名返上、反撃のチャンスをうかがっているようだ。今後のゴーン被告へのせめてもの追及のカギとされているのが、共犯として起訴されている日産元代表取締役のグレッグ・ケリー被告(63)の裁判である。東京地裁は1月16日の公判前整理手続きで、ゴーン被告とケリー被告、さらに法人としての日産の裁判を分離することに決めた。

 起訴状などによると、ゴーン被告はケリー被告と共謀し、2010年度から17年度の自分の役員報酬を、退任後に受け取る分も含めて実際には計約170億円だったのに、約91億円少なく記載した虚偽の有価証券報告書を提出したとされる。

 金融商品取引法には、役員や従業員らが事業活動に関連して違法な行為をした場合に、個人だけでなく法人も罰せられる両罰規定があるため、法人としての日産も起訴されている。

 ケリー被告は、ゴーン被告と同様に、「報告書に記載すべき確定した報酬ではなかった」と無罪を主張しており、「ゴーン被告がサインした報酬の書面作成に関与していない」と検察が主張する共謀の成立を否定している。

 ゴーン被告を裁くことはほぼ不可能となっているが、検察がケリー被告や日産の罪を立証するための証拠や証人は、ほぼ共通しているため、公判への影響は必至だ。

「ゴーン被告に対して日本の司法当局はもはや何もできない。4月から開始が予定されているケリー被告の公判は世界中から『衆人環視状態』になります。検察はケリー被告については何が何でも有罪に持っていきたい。しかし慎重に事を運ばないといけないでしょう。公判では金商法が罪として認定されるかどうか、そして日本の人質司法の問題、司法取引の問題にも改めて注目が集まります」(須田さん)

「日産幹部と検察にハメられた」と話したゴーン被告。果たして4月までにゴーン劇場の第2幕はあるのだろうか。(本誌・野田太郎)

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