こうや豆腐を使った田楽=全国凍豆腐工業協同組合連合会提供
こうや豆腐を使った田楽=全国凍豆腐工業協同組合連合会提供

 こうや豆腐が人気だ。豆腐マイスターで管理栄養士の平沼亜由美さんは書店でレシピ本が目立ち、SNSで取り上げられることも増えていると感じている。

「こうや豆腐にはパウダーや小さく切られたものなど、いろいろな商品があります。食パン代わりのサンドイッチやピザ、牛乳を浸したフレンチトーストなど。糖質を気にする人だけでなく、調理が手軽で低価格、使いやすい食品です」

 こうや豆腐は原料の大豆使用量が2019年に前年比9.2%増と、18年の同3.3%増に続き拡大。こうや豆腐はスーパーなどの乾物売り場や調理済みの総菜売り場、学校給食や医療施設など販売ルートが幅広い。最近は特に家庭向けで高い伸びになっている。

 こうや豆腐の販売は長期減少傾向だったが、反転したのは18年10月にTBS系列のテレビ番組「名医のTHE太鼓判!」で紹介された健康効果と全国凍豆腐工業協同組合連合会の古畑洋一専務理事はみている。

「こうや豆腐の健康効果がTVで紹介されると販売が増え、しばらくして忘れられると下火になります」

 こうや豆腐を国内市場に供給するのは数社。推定シェア約4割の旭松食品の担当者は「生産が現在も高止まりしており、好調に推移しています」という。

 こうや豆腐は日本の伝統食品。寒冷で地下水豊富な長野県では農家が副業で生産したが、現在はほとんどがメーカーの工場生産。豆腐を凍らせ低温で熟成し、約1カ月かかる。旭松食品の担当者はこう振り返る。

「できるまでに時間がかかります。毎年12月に需要が高まり、年末に向けてつくりためますが、一昨年10月のTV効果で、年末を待たず商品が出ていきました」

 海藻など乾物は乾燥させたり寒さにさらしたりして保存できるだけでなく、甘みや旨味、栄養価が増すものもある。こうや豆腐は良質なたんぱく質やカルシウムなどが豊富で、コレステロール低下につながる成分が豆腐に比べ圧倒的に多く、骨粗しょう症の予防効果もある。

 こうや豆腐の国内市場は100億円程度だが、今後は海外展開も期待される。大手の登喜和冷凍食品の担当者は「原料が大豆でアルコールを一切使っていない」と話し、イスラム教徒向けハラール食品にもなり得るという。前出の平沼さんは「日本から輸出しやすく、和洋中のいずれでもベースにも使いやすく、多展開しやすい」とみている。(本誌・浅井秀樹)

※週刊朝日オンライン限定記事