「今では母校のノートを見たくて来てくれるお客さんが9割を占めます。手間がかかりますから、たまに『やらなきゃよかった』と思うこともあります(笑)。でも今は、人と人がどのようにつながったらよいのかわからない時代。人を結ぶきっかけになればうれしいです」

 当然、店では同窓会が連日のように開かれる。取材に訪れた昨年12月も、佐賀県の高校の出身者が集まって、ノートを肴(さかな)に語り合っていた。

 実は山口県出身の松永さんは、岩国高校の同窓会に、長く顔を出していなかったという。

「歴史ある高校だったので、年長の人ばかりでおもしろくなさそうだと勝手に思っていました。15年前に病気をして長く店を休んでいたとき、たまたま案内状が来たので行ってみたら、みんな気兼ねなく話しかけてくれました。地元の方言を聞いているうちに昔の景色も思い浮かんできて、故郷が身近に感じました。それからは毎年、出席しています」

 70代の松永さんにとって、同窓会は「ほっとする場」だという。

「同窓生から子育て介護の苦労などを聞き、悩みを抱えているのは自分だけじゃないってわかるだけで安心します。中には今の境遇を自慢げに話す人もいますが、年を取るほどそういう人は減り、性格も丸く、優しくなっていくものです」

 幹事代行サービスを手がける会社も複数ある。「笑屋」(東京都千代田区)は、企画から会場選び、案内状の送付、当日の運営まで引き受ける。代行する件数は年550程度。近年は卒業名簿や連絡先が公表されにくくなり、案内状を送るのも大変だという。

 広報担当の川手耀さんは開くタイミングは40代が最も多く、還暦を迎える60歳が続くと説明する。

「40代は子育てが一段落し、仕事も少し落ち着いて時間とお金の余裕が出てきます。還暦の方々は、引退してもパワーがあり余っている人が多いですね」

 代行サービスの「同窓会ネット」(大阪市北区)によると、参加後にLINEのグループができたり、女子会やゴルフコンペを開いたりするケースもあるという。

 40代はもちろんシニアだって楽しめる。心も若返るために、あなたも参加してみては。(本誌・池田正史、吉崎洋夫、浅井秀樹、多田敏男)

■やってはいけない七カ条
★相手の話を聞かず自慢ばかり
★肩書など上下関係を持ち込む
★容姿の変化についてからかう
結婚や子どもの有無をチェック
★自虐トークを続け暗い雰囲気に
★一部の友人とだけで盛り上がる
★連絡先をよく知らない人と交換

週刊朝日  2020年1月24日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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