「この役はこれまで、お亡くなりになった八千草薫さんが演じて、3回も上演されています。八千草さんも登山が好きで、自然をとても愛した方でした。八千草さんたちが作り上げてきた世界を壊さないようにしたいと思う一方で、同じようにはできないとも思う。プレッシャーもありますが、これからの稽古で、演出家の方や共演者の方と話し合って新しい『黄昏』を作り上げていくと思うと、今から楽しみです」

 舞台のもう一つのテーマは「老い」でもある。

「最近になって、自分も年をとったと思うようになりました。歩いていたら股関節をねじってしまったことがあるんです。整体に行って今は治りましたけど、歩くのが大変という気持ちを初めて味わった。シワも増えたように思うし(笑)。年をとるってこういうことかもしれないなって。何年か先に現実にやってくる老いというものを初めて身近に感じました。ただ、そういう自分だから演じられる役なのかもしれないとも思っています」

 2019年9月には舞台「サザエさん」でフネ役を演じた。実年齢より高齢の役柄だった。

「そういう役を演じる年齢になったんだという自覚はあります。年輪を重ねなければわからないことも演じられるようになってありがたいと。やりがいはあると思っています。でもね、自分では変わってないつもりなんですよ(笑)」

 そう語りながら、エピソードを明かす。

「数年前ですけど、日比谷でナンパされたことがあるんです。若いサラリーマン風の男性に『お茶行きません?』って話しかけられて、『これから舞台があるのよ。よかったら見に来ませんか?』って答えたら、その男性、ちゃんと見に来てくれたみたい(笑)」

 今も若々しい高橋さんだが、20年が芸能生活50周年で、今月、65歳になる。

「50周年。ビックリですね。ありがたいことに、何か記念になることをやろうと言われましたが、今回はやめることにしていただきました。昔から、女優の仕事は60年やりたいと言っていたので、あと10年は続けたい。“還暦”じゃありませんが、芸能生活60周年になるまで、記念の催しは延ばしてもらいました。10年後は75歳。そのときになってみないとわかりませんが、きっと61年目、62年目も、元気であればこの仕事をやってるような気がしています」

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