政治が時代に追いついていないんです。女性が従属的立場に置かれている、それが当たり前なんだ、という観念がずっと続いているんですね。

桐野:1997年に『OUT』という本で、弁当工場で働くパート主婦の話を書いたんですが、外国のメディアの人が取材に来ると、一番聞かれるのは「どうして夫はホワイトカラーなのに奥さんはブルーカラーなんだ」ということでした。夫婦が家の中で階層的に分断されている。そういう状況がなかなか欧米のメディアにはわからなかったみたいです。日本では家計補助的なパートタイマーをやる主婦が多い、と言うと、すごく驚かれたものです。

 この20年で状況はもっと悪くなって、男性の非正規労働者もすごく増えたし、単身者が多くなって、非婚化が進んでいます。

前川:2015年に、安倍首相はアベノミクスの「新3本の矢」という公約をしました。そのうちの一つが少子化対策で「希望出生率1.8を実現します」というものです。なのにそれから出生率は下がり続けています。本当に子どもを産み育てやすい条件を作ったか、というと作っていない。

桐野:全くできてないですよね。今、少子化どころか無子化とも言われてますから。30代の若い女性に話を聞くと、苦労することがわかってるから「子どもは産まない」という人が多い。

前川:だとすると、生まれてくる子どもも望まれない形で生まれてくることが多くなるんじゃないか、と思う。それは子どもにとっても不幸なことですよ。

桐野:虐待も本当に多いですよね。最近やたらと目につく、男親の虐待は、なんで起こるとお考えですか。 

前川:私もその心理は推し量りがたいところがありますけど、虐待する親は多かれ少なかれ、自分が虐待されてきた過去があると思う。自分を愛さない人は人も愛せないですから、自分を愛さない人が子どもも愛せなくなってしまうのでは。愛情深く育てられていれば、虐待なんて起こらないと思いますよ。 

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