平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数 (撮影/写真部・小山幸佑)
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数 (撮影/写真部・小山幸佑)
昨年秋に完成した「GMOアスリーツパーク湯の丸屋内プール」=長野県東御市 (c)朝日新聞社
昨年秋に完成した「GMOアスリーツパーク湯の丸屋内プール」=長野県東御市 (c)朝日新聞社

 指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチの連載「金メダルへのコーチング」。第2回は高地トレーニングの効果について語る。

【写真】昨年秋に完成した「GMOアスリーツパーク湯の丸屋内プール」

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 水泳は山で鍛える。標高2千メートル前後のプールで練習をする高地トレーニングが、世界のトップスイマーの間で広く行われています。

 私は1999年、翌年のシドニー五輪を目指していた当時高校2年生の北島康介らと標高2100メートルの米アリゾナ州のフラッグスタッフで高地トレーニングをして以来、20年にわたって経験を重ねてきました。

 2003年バルセロナ世界選手権の前には、標高2300メートルのスペイン・シエラネバダでトレーニングを積み、北島は100メートルと200メートルの平泳ぎで世界新の優勝。翌年のアテネ五輪前にもシエラネバダに行き、2種目金メダルの結果を出しました。大会前だけでなく泳ぎ込みの合宿にも高地を使います。標高1800メートルのフランス・フォントロミュー、標高1900メートルの中国・昆明などにも行きました。

 酸素の薄い高所でトレーニングをすると心肺機能が高まり、持久力アップにつながります。私が始めたころはマラソンなどの持久系に向いていると言われ、100メートル、200メートルの競泳種目には不向きという指摘を受けました。

 文献を調べ、専門家の意見も聞いて、トレーニングのやり方によっては効果が期待できる、と考えて取り組みました。高地にいる期間や練習強度、山を下りてから大会までの期間はどのくらいか。研究者の方法論をベースに、「こうすれば結果が出る」という自分なりの仮説を立てて、様々な方法を試してきました。

 今はウェートトレーニングも積極的に採り入れています。高地で筋量を大きくしてから平地に下りると、バイクの排気量が大きくなったように体が酸素を取り込みやすくなってパフォーマンスが上がる。そんなイメージを持っています。

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平井伯昌(ひらい・のりまさ)/東京五輪競泳日本代表ヘッドコーチ。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる』(小社刊)など著書多数

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