──工藤阿須加、川口春奈、三浦翔平、大島優子をはじめとした生徒役のキャストとのやり取りで、特に印象に残っていることは。

 それ(話してたら)、夜になりますよ(笑)。でも思い返すのは、カメラの前でいかにノンフィクションのように動けるかを訓練する、作品とは別の“教場”です。

 撮影現場に入る前の段階で、カメラの前に立つにあたって、何もセットがないスタジオにキャストが集まって、何度かトレーニングのようなことをしたんです。その頃は夏で、みんな警察学校のコスチュームに着替えてからも暑くて、帽子を団扇(うちわ)代わりにあおいだりして。まだコスプレ感覚だったんです。自分も最初は風間公親(かざまきみちか)という教官役をやる木村拓哉、として現場に行って、教官として教室で号令をかけたりしてました。教官役だから、僕は一切動いてなくて、号令をかけてるだけ。動いてるのは彼ら(生徒役)だけなんですよ。

──コスプレ感覚からどうやって役に入ったか。

 何度かトレーニングを重ねた時、三浦翔平が「みんなで一度、パーソナルな時間を作りませんか?」と言ってくれて。僕も「いいね」って応じて、みんなで集まったんです。そこでみんなから「どうですか?」って聞かれて。それで僕は「いや、どうですか?じゃなくて。カメラの前に立つ状態が10だとしたら、今の自分たちは、いくつだと思う?」って聞いたんです。そしたら「2」とか「3」とかって数字が出てきた。その時もう、トレーニング期間は残り3回しかなかったから、「今日中に5まで上げようよ」っていう話をして。その瞬間に、全員がものすごいデカい声で「はい!」って言って。そこからですかね、急に撮影に向けて全員のギアが入ったのは。

──まさに自身が現場でも“教官”だったのか。

 いえ、そんなことはないんですけど。でも自分もしっかりと風間という人間の状態になって、現場に入るべきだと思ってそうしたんです。すると、暑いからって帽子であおぐ奴は一人もいなくなったし、これはちょっとかわいそうだったんだけど、待ち時間に、いすの背もたれを使う人も誰一人としていなくなった。終わってからも、みんなが「すみません、付き合っていただいていいですか?」ってやってきて。だから「もう帰っていいよ」という状態の中で、僕が号令をかけて、全員が一連の状態をいかにできるようになるかというのを、ひたすらやってました。すごい熱量でしたよ。自分も、自分以外の熱量も、すごいものがありました。フィクションとはいえ、真剣に取り組んだからこそ、楽しく感じられたんでしょうね。

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