「百歳目前で餅を喉に引っかけて死んだら…」瀬戸内寂聴に横尾忠則が言ったこと

週刊朝日
横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。(写真=横尾忠則さん提供)
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横尾忠則(よこお・ただのり)/193...

 半世紀ほど前に出会った97歳と83歳。人生の妙味を知る老親友の瀬戸内寂聴さんと横尾忠則さんが、往復書簡でとっておきのナイショ話を披露しあう。

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■横尾忠則「ニッコリ写真にホッ 思い出共有で元気に!」

 セトウチさん

「まだ死ねない」と贅沢(ぜいたく)なことばかり言っているセトウチさんに、「もっと生きたい」と思わせる何かないかなと考えた時、セトウチさんと知り合って間もなくの頃、得度の前の有髪時代の瀬戸内晴美時代に後楽園球場の野外ロックコンサートに誘いましたが、憶えていらっしゃいますか。アメリカのハードロックのグループ「グランド・ファンク・レイルロード」の公演でしたが、開演と同時に天を突くのか裂くのか知らないけれど猛烈な嵐と雷でステージは洪水のように目茶苦茶になりましたよね。メンバーは全員裸になって、雷鳴と音楽が炸裂(さくれつ)するコラボです。ギターに雷が落ちると感電死しちゃいます。決死のライブでしたね。セトウチさん、日本のライブの歴史に残るあんな凄(すご)いロックコンサートを観(み)てびっくりしたでしょう。僕は海外で何度も経験はありますが、あんなのは初めてでセトウチさんはロックにうといと思いますが、凄いコンサートを観たんですよ。あの時を思い出せば、「死にたい」なんてチャンチャラオカシイでしょう。あの狂った驚異の大自然こそ生命のエネルギーです。少しは元気になりましたか。

 自筆の年賀状を持ってニッコリのセトウチさんの写真、送られて来ました。あの写真を見たら元気そのものですよ。何が弱ったとか、死にたいとか、あの笑顔はまだまだ死ねない笑顔です。僕もホッとしました。百歳のおばあちゃんがバイクで走っているテレビ観ました? セトウチさんはバイクに乗れないのでエンジン付き車椅子なら乗れます。比叡山などアッという間に登れます。

 いつか東京の帝国ホテルの広いロビーをまなほ君が車椅子に僕を乗っけて物凄いスピードで走らされたことがありました。セトウチさんが「一度車椅子に乗りなさい」なんて言っちゃうから、あんなことになっちゃって、フロントのボーイさんはあきれた顔をしていましたよ。まあセトウチさんのやることだから大目に見てくれたんですが、僕は恥ずかしかったですよ。大の大人が天下の帝国ホテルのロビーを車椅子に乗せられて、走り廻されるこの光景を想像してみて下さいよ。セトウチさんは遠くで顔をクシャクシャにしてゲラゲラ笑っているだけで、なんて尼さんとその秘書ですか! もう!

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