そして、ウイグル族への弾圧は、世界の大問題となっている。

 だが、その中国と激しい覇権抗争をしているはずの米国が、たとえばペンス副大統領が1年前には「新冷戦」と称されたほどの激しい演説をぶち上げたのだが、今回は完全に腰砕けであった。

 それに、トランプ大統領も中国に対して、口では厳しいことを言っているが、現在のところは大きく妥協している。トランプ大統領のディールはどうなっているのか、よくわからない。

 こうした米国と中国との間で、日本はどのように生きればよいのか。

 安倍首相自身、迷いに迷っているはずである。

 習近平国家主席の本意などはわからない。しかし、米国との覇権抗争の中では、日本を仲間にしたほうがよい、と考えているのだろう。

 トランプ大統領にしても、日本とはどのように付き合えばよいのか、と考えているわけだ。

 このあたりのことは、安倍首相も外務省幹部もわかっているはずである。

 ただ、トランプ大統領、習近平国家主席のいずれからも、より信用されたほうが国益になる、と捉えているのだろう。

週刊朝日  2020年1月17日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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