--インバウンドをどうみていますか。

 まだすべきことはたくさんあると考えています。ビザを解禁してアジアからの旅行需要を取り込むことはうまくいきました。ここから先は、それだけでは同じような伸びをしていくことができません。質や生産性の課題を解決し、新たな投資を呼び込み、その地域の魅力を増していくことが大事です。

 アジアの国々からお客さまがいらしているのは、日本がアジアから近いからです。世界のあこがれの観光地としてみると日本は負けています。米国や欧州の人たちが行きたいところに、アジアの人たちも行きたいと思っています。

 あこがれの度合いで日本は負けていると将来、問題になってくると思います。欧米の人たちが日本の観光地や日本そのものに行ってみたいというパターンをつくることが大事です。それができれば、アジアからもお客さまが継続して来てくれると考えています。

 数が多くターゲットにしやすいという理由でアジアから集客するのは、危ないアプローチだと感じています。アジアの人たちが日本をあこがれの場所として位置づけてくれないと、長期的にリピートしてくれませんし、本当に行きたいところへ旅行先を変更していくと思います。

 日本の観光は過去にいくつかのブームをつくってきました。団体旅行、バブルのころの旅行やスキーなどです。現在のインバウンドをブームとして終わらせないためには質を重視していく必要があります。日本の競争力、観光産業の生産性を高めていくことに取り組むべきです。短期的な数字を追いかけない方がいいと思っています。
--2020年は東京五輪・パラリンピックがあります。

 五輪を通して東京以外の地方の魅力を世界に発信できるかが重要なポイントです。札幌にマラソンが移ったのは、地方からは歓迎すべきことだと考えています。もっともっとオールジャパンの五輪にしたほうがいいと思います。今回は福島でも開催する競技があります。福島は今も原発事故の風評被害を受けており、安全であるとしっかりと世界に伝えるべきです。

 東京以外にも、日本には個性にあふれ魅力的な地方がたくさんあると伝えることも大事です。大都市と地方との間でインバウンド格差がなくなるように、魅力を紹介していかないといけません。

 地方の魅力を伝えることは、交通アクセスの良い東京や大阪にもプラスになります。今まで知られていなかった日本を世界に発信していくことは、海外の人たちも求めていると感じています。新しく、知らないところを紹介するときに、それぞれがアピールできる内容を用意しておくことが大事です。

 欧米の観光客のなかには、沖縄の離島や伝統工芸などに興味を持ってくださる方々もいます。

 五輪では情報発信の絶好の機会を得ました。各地がアピールするチャンスを、是非つかんでいただきたいと思っています。(本誌・浅井秀樹)

※週刊朝日オンライン限定記事