--温泉の魅力とはなんでしょう。

 日本の温泉旅館は世界でもまれにみる文化体験の場です。日本建築の独特な部屋に泊まり、日本食をいただき、裸で温泉に入ります。地域の魅力や文化が楽しめるテーマパークなのです。日本人は温泉が大好きですし、海外のお客さまの満足度は高いと感じています。

 一番大切な顧客はもちろん日本人です。日本文化のテーマパークなので、本物であるために日本の顧客に支持されていることが大事です。そのうえで、成長分野のインバウンド(訪日外国人)にも来ていただきたいと思っています。温泉旅館はまさに両方に合った施設なのです。

--温泉旅館はもちろん、リゾート施設でも競争が激しくなっています。

 今は旅行者が洗練されてきており、行動形態が団体から個人に移っています。旅行者は遠くへ行き、独特な文化を味わいたいと思っています。世界を見てきた個人のお客さまにも満足してもらえるように、それぞれの地域らしさを大切にする施設にしていきます。

 今後、外資系のホテル会社などライバルがどんどん出てきます。大分県別府市にも外資系ホテルチェーンが進出しました。北海道のニセコ町にも外資系のホテルが増えました。日光や軽井沢、京都などでも目立ち始めています。最終的なライバルは外資系の運営会社になると考えています。

--世の中にはホテル乱立の懸念もあります。

 昨今のホテル乱立の懸念に対しては、長くデフレ経済の供給過剰のなかで事業を展開してきており、恐れることはありません。星野リゾートはブランド力を強め、よりサービスの質を上げ、ユニークな取り組みを進めていきます。

 国内旅行消費額は26兆円と言われています。このうちインバウンドは成長していますが、日本人による国内観光が落ち込むこともちらほら起こっています。インバウンドが増えても、今後は団塊の世代が後期高齢者になるなどで日本人の国内観光が落ち込み、全体として相殺されることも起こってくるかもしれません。国内観光需要がどんどん伸びていくと楽観するべきではありません。

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「将来の国内観光を支える20代、30代が重要」