もちろんイランも黙っていない。最高指導者ハメネイ師は、「米国は激しい報復を受けることになる」と発言。ラバンチ国連大使は、「殺害は戦争行為で、間違いなく激しい報復をする」と語った。イランも体制を維持するために国民の反米感情を利用してきた経緯があり、引くに引けない状況なのだ。

 緊張が高まるなか、米軍は3500人を中東地域に増派する方針だ。イラクにおいてイランが支援する軍事組織への攻撃も強化している。イラクの首都・バグダッドの米国大使館は3日、イラク国内の米国市民に直ちに国外退避するよう求めた。

 現在はイランの出方に関心が高まっている。報復を宣言した以上、何らかの攻撃をするとみられるが、全面衝突を避けるべく米軍への直接的な攻撃はしないとの見方が有力だ。これまで通り、支援する軍事組織を使ってイラン国外での戦闘を仕掛けていくようだ。第三次世界大戦のようなことは、すぐには起きないとみられている。

 ただ、歴史が物語っているように、突発的な衝突が大規模戦争につながることもある。「第三次世界大戦」を意味する言葉が、世界的に検索ワードの上位に一時入るなど、不安は根強い。

 もし大規模戦争ともなれば経済にも悪影響が出る。国際市場ではリスクを回避するべく株が売られ、安全資産とされる円が買われた。原油の流通に支障がでる可能性もあり、原油高も進んだ。

 日本は中東に原油や天然ガスなどエネルギーの大半を依存している。戦争で日本に原油や天然ガスを運ぶ航路が寸断されれば、大きな打撃を受ける。

「トランプ大統領は選挙に向けて支持を得るため、対決姿勢を強める可能性があります。日本市場では正月明けに株安や円高、原油高になりそうで、景気の先行きが不透明になります」(大手証券アナリスト)

 こんな危機的状況なのに、日本政府の対応は見えてこない。安倍晋三首相は4日、イランの情勢について記者団から問われたが、具体的な言及を避けた。イランとの太いパイプがあると自負してきただけに、危機にどう対処するのか問われる。(本誌・多田敏男)

※週刊朝日オンライン限定記事