小林「それはステキですね」

岸「太地喜和子さんと三人でいらっしゃるときもありました。喜和子ちゃんは映画で坂本龍馬の恋人役で、私が池田屋のおかみの役だったのです。それで気が合ってね」

 平幹二朗さん、蜷川幸雄さん、草笛光子さん……。岸さんのお友だちの話、そして母の話と続く。岸さんは明治生まれのその母の気質を受け継いでいるかもと。2人の話は尽きない……。 対談を終えた2人が本誌に今年の抱負を語ってくれた。

岸「私は好奇心がつよく、無鉄砲にもかなり果敢に世界の何処へでも出かけて、自分の眼で見て肌で感じたことを書くのが好きです。世間が雑に作った『常識』や『報道』を鵜呑みにしないで(ゴメンナサイ)、自分の感性を大事にしたい。勿論失敗やしくじりもたくさんあります。その時は遅すぎる反省や熟慮もします。そんな起伏の多かった私の生きた道筋を今年はエッセイ風に書いて見たいと思っています」

小林「去年までやれていなかったことを、今年はやってみたいなと思います。岸さんについて行かせてください。新年にステキなお年玉をいただきました。ありがとうございました」

岸「こちらこそ、ありがとうございました」

 岸惠子さんは最後に本誌読者に次のようなメッセージを送ってくれた。

岸「政治も経済も人の心も、世界は今潮目を変えていると思います。日本も大変な状況にあると思います。私は自分の人権も大切だけれど、人の人権や尊厳を大事にするフランスという国に長年住んでいたので、日本人のやさしさや謙虚さを誇りに思うけれど、逆に正当な権利も主張せず(ま、しかたがないか…)と事なかれ主義に流れることが残念です。虐待問題や、人為ミスによる事故や、自殺、若い人だけではなく、中高年の人たちまで引きこもりや、自殺願望があるということは胸が痛いです。今のところ、まだテロの手も伸びてこない、世界の先進国のなかでは、一番安全な国の筈です。その稀な安全地帯に見合う強い生き方をしなければ勿体ないと思います」

 そして2月には小林麻美さんの評伝『小林麻美――第二幕』が朝日新聞出版から刊行される予定だ。1991年に突如、芸能界を引退した麻美さんの四半世紀にわたる沈黙の真実と、田邉昭知氏との結婚生活、ユーミンとの友情、東京の街が発熱していた時代を初めて語る。 ラジオプロデューサー・作家の延江浩がインタビューを重ねた。(本誌・鮎川哲也)

※週刊朝日オンライン限定