ブレーキをかけるのが役目だと考えている。そのためにも、選手のことを知ろうと努めてきた。

 8~9月にチームの3分の1にあたる25人を引き連れて米フラッグスタッフで高地合宿を実施。4週間にわたる生活で、選手同士はもちろん、監督も選手たちとの距離を縮めた。

 最近は1時間ほど、選手と一緒に走っている。

「無理やり私のほうから引きずり込んで(笑)、1対1でいろんな話をします。目標や夢を持たせる。それが彼らの原動力になります」
その結果、10月の出雲で4位とつまずいたチームを、11月の全日本で16年ぶりの優勝に導いた。

 一方で、エントリーメンバーから外れた選手への気遣いも忘れない。今回発表された16人の中には、中島怜利(4年)とエース格だった関颯人(4年)が入っていない。

「本来のところまで戻してこられなかったというだけ。残念なところもありますが、ただ、彼らも応援という形で頑張ってやってくれていて、それがチームの力になっている。そういった彼らの思いまでも、うまく選手が力にしてくれたらと。複数の部員がいて、それぞれの選手にドラマがある。そして、一人ひとりが自分の思い描くことに向かって努力をしています。中島も関も実業団に行って陸上をやりますから、これを糧にしてさらに成長してくれる。そういう期待はすごくしています」

 ある選手は両角監督について、こう話す。

「一緒に走らなくても、普段から話しやすいですよ。僕は社会人になったことはありませんが、『話しやすい上司』みたいな感じです。優しいし、絶対怒らない。主体性を大事にする監督。今回(の箱根)も監督を胴上げしたいです!」

 両角監督は言う。

「(11月の全日本で)優勝できてチームを上昇ムードにのせることができました。それから2カ月で迎える箱根。さらに集中力を高める中で、いい仕上がりができているのではないか、と感じています。学生たちも、さまざまな個人の試合の中で、力を上げることができて、自信を持ってこの箱根路を臨むことができると思います」

 進化をテーマに掲げた今季。箱根に向けて「負けられない思い」と、重圧がかかっていることを認める。

「ただ、勝った経験があるのは大きい。現状に満足せずに挑戦していこうという思いが強い選手たち。4年生も非常に仲良くて、しっかり引っ張っていいチームが作れています。今年のチームはある意味最強と言えるかもしれません」(本誌・大崎百紀)

※週刊朝日オンライン限定記事