「会計や人事の負担が減れば、空いた時間を本業に向けられるようになります。中小企業だって、大企業に負けない事業をしているところはいくらでもあります。熱意やアイデアさえあれば、誰でも起業できるようになるんです」

 佐々木さんによると、日本ではfreeeのようなサービスの普及が欧米に比べて遅れている。日本で市場が伸びる余地はまだまだあるとにらむ。上場で調達した資金は、研究開発や人材確保などにまわし、さらなる成長を目指す考えだ。

 佐々木さんは20年はキャッシュレス決済がさらに広がると予想する。

「キャッシュレスがもっと一般的になれば、支払いの手間が減ります。お金をなくす恐れもなくなり、高齢者にとっても、より便利で安全になるはずです。人手不足の解消にもつながる。当社の役割も、もっと大きくなります。現金を数えなくても売り上げが自動的に集計され、ネットですぐに確認できる。データはクラウド上にあるので、消えることはありません。19年は水害もありましたが、私たちのサービスは災害にも強いのです」

 新技術を普及させるため、ほかの経営者とも協力。佐々木さんは、楽天の三木谷浩史会長兼社長が代表理事である新経済連盟の幹事を務める。金融と情報技術を融合させた「Fintech(フィンテック)」の分野でも、積極的に調整役を担う。

「民間企業が発展していけるように、いろんな経験をしていきたい。生産性の改善など政府が取り組むようなテーマでも、デジタル技術を生かせばみんなで強くなれます」

 デジタル技術で私たちの暮らしを本当に便利にできるのか。20年は佐々木さんにとって勝負の年になりそうだ。

(本誌・池田正史)

※週刊朝日オンライン限定記事

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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