五木:そうそう。ずっとマイナーなセンチメンタルな歌謡曲を歌ってましたから。

大竹:いいですよね。悲しい歌が力を与えてくれるというのはありますね。

五木:ところで新年を迎えますが、なんて、司会者みたいだけど(笑)、大竹さんは2020年への思いなんてありますか。僕は強いて言えば、これからは50歳以上の人たちが中核にならざるを得ない時代がしばらく続くと思う。歴史をたどると経済的成長が下り坂にさしかかるころにカルチュアが花開くことが多いでしょう。

 これからは経済的な成長だけではなくて文化的成熟に第一歩を踏み出していく。それが令和の時代と思ってるんですが。

大竹:その通りです!

五木:映画ができたとき、これで演劇が終わると言われた。テレビができたとき、映画が終わると言われた。でもぜんぜん終わりにならなかった。

大竹:私たちの世代もしっかりしなきゃいけないなと思います。成熟した大人の作品がもっと出てほしい。

五木:若い人のカルチュア、中年のカルチュア、シニアのカルチュアが和音のように重なっている時代になるといいですね。ところで大竹さん、2020年のお仕事の予定は?

大竹:チェーホフの「桜の園」とか、秋には「女の一生」という杉村春子さんがおやりになっていたお芝居がひかえています。それと並行して音楽もやっていこうと。限られた時間というのを意識しているわけではないですけど、最近はやりたいことを楽しくやろうという気持ちが強くなりました。先生に、元気で仕事を続けられる秘訣をうかがってから帰らなくては。

五木:秘訣ですか。きょう一日、ですかね。きょう一日というのが続いて1年になる。先のこと考えないというアナーキーな立場で。

大竹:それなら私も行き当たりばったりのところもあって、それで毎日毎日を生きてます(笑)。

五木:大竹さんと四十数年ぶりの対談ということで、あなたのキャリアをいろいろ拝見したんです。びっくりしたな。めちゃめちゃ仕事をしてるんだね。テレビ、バラエティ、演劇、音楽……。ものすごい量だ。賞の数だって、数えられないくらいに。

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