橘玲(たちばな・あきら)/1959年生まれ。作家。新書大賞2017を受賞した『言ってはいけない残酷すぎる真実』など、著書多数
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橘さんのツイッターより
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 社会は持てる者と持たざる者に分断されている──誰もがうすうす気づいていたこの事実について分析した『上級国民/下級国民』。定年後の上級/下級を分かつものとはなにか。「生涯共働きが下級から逃れる唯一の方法」と断言する理由を著者の橘玲氏に聞いた。

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──2019年6月、「平均的な老後資産は2千万円必要」という報告書が発表されました。家計調査によれば、日本の全世帯の3割は2千万円以上の金融資産を保有しています。逆に言えば、残りの7割は、年金だけでは老後を生きていけない、と宣告されたことになります。

 7割の「持たざる人たち」にとっては、たしかに衝撃的なニュースだったでしょう。しかしまったく話題になりませんでしたが、残りの3割の人たちも驚いていたのです。「えっ、2千万円ぐらいでは全然安心できないよ」と。

 これは簡単な計算でわかります。100歳まで生きると仮定すれば、60歳で定年退職してから人生はまだ40年間続きます。2千万円の資産を40年で割ると、年間50万円。月に直せば約4万円。夫婦なら1人月2万円にしかなりません。これで「安心した老後」が迎えられると思う人は多くないのではないでしょうか。

──なぜ、定年後に格差が生まれてしまうのでしょうか?

 一番の大きな理由は高齢化です。「家計の金融行動に関する世論調査」では、70歳以上で金融資産ゼロの世帯が約3割も存在しています。仮に30歳から70歳までの40年間、なんの貯蓄もしてこなかったとすると、月2万円の積立貯蓄をしてきた人との資産の差は1千万円近くにもなります。単に長生きするだけでより格差が広がっていくのが、超高齢社会の現実です。

──持ち家があるかどうかも定年後を左右するのでしょうか。

「持ち家があれば裕福で安心」というのは過去の価値観です。同調査では、金融資産ゼロの人のうち、78.8%が持ち家に住んでいることが明らかになっています。持ち家でも貧乏、という人が多いのが現実です。

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