付き合いは悪いけど、お歳暮だけは我が家に直接持ってくる「令和」くん。決まって3500円のグルメカタログだ。ソー・クール。「たびたび出直すのも迷惑だと思い、こちらに失礼いたします」とメモの入った紙袋が雨ざらしのドアノブに。案の定、カタログからメモから濡れてびしょびしょ。「『迷惑』じゃなくて自分が面倒なだけだろう。やっぱり令和だ」と思いつつ、佃煮詰め合わせを選んで投函した。ありがとう「令和」くん。

「兄さんは辞めたいと思ったことないんですか?」と神妙な「令和」。「オレ? まるでないねー」と言うと「はあ~、いいなあ~。人生楽しいですか?」と「令和」はため息。私「たのし~よ~」令和「ある意味、羨ましいですわ」。『ある意味』ってどんな意味だよ。「令和」は「稽古があるんでお先に失礼します」と席を立つ。ご馳走様くらい言ったらどうだ。「LINEやったほうがいい」とか勧めたくせにいつまでもアカウント交換しようとしないのはどういうことだ「令和」。まあ、お互い先は長いぜ「令和」。なぁ「令和」。

 別にモデルがいるわけじゃありませんが、私の「令和」はまだまだこんなイメージ。2020年にはもうちょい「令和」との距離が縮まるといいな。

週刊朝日  2020年1月3‐10日合併号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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