「20代前半は、“等身大で演じてください”と言われることが多くて、『等身大って何?』ってことに頭を悩ませていました。なぜか実年齢より若い設定のほうが多くて、だんだんやりづらくなるんじゃないか、いつまで実年齢より若い役を演じ続けられるのだろう、という不安もありましたし。昔はだから、インプットばかり欲していましたね。でも、20代半ばで、岩井俊二監督の『Love Letter』とか、竹中直人さんと夫婦役を演じた『東京日和』のような作品と出会えたことで、面白い仕事を一つひとつ丁寧にやっていけばいいんだと思うようになったんです。今は私を必要としてくださるのなら、どんな役でもお引き受けしたい。どんな現場でも飛び込みたい。3年前には舞台にも挑戦しましたし、ある意味、怖いものなしです(笑)」

 そうやって今の自分を肯定しながら、「でも、精神的には、昔のほうが大人だったような気がします」とも。

「物事を一つひとつ真面目に考えていたし、人の言うことにも素直に耳を傾けていたので、分別があることを“大人”というのならば、昔のほうが大人で、今はむしろ、“自由にやらせてもらっているなぁ”という感じです。かといって、何も考えてないわけじゃないですよ!(笑)ただ、物事に、必要以上にジタバタしなくなったんです」

 人生の中で、経験としてインプットしたものが、滲み出ればそれでいい。女優として、今はそんな境地にいる。

「役を演じる上で、技術的な部分や熱量以外に、自然に滲み出る何かが、一番その人のオリジナルなんだと思う。だとしたら、年を重ねること、経験を積むことすべてがお芝居の肥やしになる。80歳ぐらいのおばあちゃんって、陽だまりの中で座っているだけでも、何かが見えちゃうじゃないですか。私もそういう豊かさが欲しいんです。年齢を重ねて、ちゃんと自分の“味”を出していきたい」

 実は、中山さんがこっそり狙っている“味”こそが、ユーモアなんだそう。

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