演じた浅丘ルリ子さん、とってもチャーミング。ほんとにチャーミング。すごいさばさばしてて。でも、何しても可愛らしい。

──男といえば、リチャード・ギアさんが寅さんを演じた、炭酸飲料のCMが日本では流れました。

 私も出ていました。とても素敵な方です。360度どこから見てもリチャード・ギアなんです。立ち姿も美しかった。渥美さんも同じ。360度どこから見ても渥美さんなんですよ。

 私が一番好きなのは、遠目のロングショットのちょっと斜め後ろ姿の渥美さん。本当に素敵。足が長くてすらっとしてて。でも肩、背中が大きくて、もちろんあのニカッとした笑顔。上品なあの笑顔も大好きでした。

──その渥美さんについてあまり語りたがらない人もいます。その思いが私も分かるようになりました。

 そうですねえ。語ることによって渥美さんがこの世にいないということを再確認するみたいな、そういうつらさがあるのではないでしょうか。私は今回、50作目の新作を改めて見て感動して涙しました。

 そして「あ~、もう本当に渥美さんはいないんだ」と再確認して涙しました。ラストシーン。たくさんのマドンナが出てきますが、そこにポッと出てくる渥美さんの笑顔を見てまた涙がこみあげてきたのです。

──ところで、久しぶりに女優業に復帰され、日本に来る機会が増えました。

 温泉行きたいなあ。どんなところ?って……。うーん、草津温泉とかまだ行ったことがないので行きたいですね。

 東京・六本木スタジオでのインタビュー。「私の人生、すべてプライベートですから。好きに私生活歩んでますよ」と言っていた。

 人生を前向きに肯定する力強さこそが、ゴクミのゴクミたるゆえんだろう。ゲーテ「ファウスト」の終幕のことばが重なる。

「永遠なる女性的なもの、われらを高みへ導く」

 寅さんも美しいマドンナとの恋を通じ、世の中を学んできた。「青年、行け!」。そんな声が聞こえてきそうである。

 50作目の新作。12月27日の公開まであと少しだ。(朝日新聞編集委員・小泉信一)

週刊朝日  2019年12月27日号より抜粋