周防:映画ってキャスティングで、ある程度決まっちゃうんです。脚本があって、キャスティングが終わったら、もう9割方、映画は決まっていると思わないと。あとの1割でどこまでいけるかは監督やスタッフ、キャスト同士の工夫ですけど、大きくは変われないし、正直なところ、半分くらいはよく知る役者がいたほうが計算しやすいんです。僕の映画では、竹中直人さんや渡辺えりさんがそこを引き受けてくれていますから。
成田:おふたりがいて、周防組の空気感みたいなものを感じられたのは、すごくよかったですね。現場でも緊張感で一瞬しんとするときがあるじゃないですか? そういうとき、竹中直人さんの口笛が現場に響きわたって、リラックスできたり。
周防:うまいんですよ、彼。大好きなの。
成田:本当に魅力的で。僕、口笛がクセになっちゃって(笑)。
周防:竹中さんは好き勝手しているようで、監督がやりたいこと、その映画でやろうとしていることは踏み外さない。演出や狙いを理解したうえで、じゃあ、ここまでやったらどうですか、という芝居をしてくれる。昔、竹中さんが、周りからやりすぎだと言われたことを気にしていたから、「いや、竹中直人にやりすぎはない」って言ったの。
成田:名言です。
周防:でもこないだ、竹中さん、僕がやりすぎだと言ったって怒ってました。「やりすぎはない」って言ったじゃないですかと(笑)。
成田:幸せな現場でしたね。本当にいろんな方に見ていただきたい映画です。出てくるどの人物も魅力的で、敵も味方も全員幸せになってほしいと思える作品ですから、ぜひご家族で。
周防:お孫さんと一緒に見てもらってもいいよね。ひ孫もOKです(笑)。
成田:ふだん戦隊ものを見てる子供たちも、ドタバタして滑稽なアクションは楽しいんじゃないかな。
周防:他の映画ではなかなか味わえない台詞のリズムがあふれていますから、年齢に関係なく、ぜひ日本の語り芸に触れていただきたいですね。
(構成/朝日新聞出版書籍編集部・山田智子)
※週刊朝日 2019年12月27日号