周防:クランクインの直前に聴いて、まあこのレベルならギリギリ合格かなと思っていたんです。ところが、クランクインして1カ月後くらいに初めて活弁のシーンを撮影したんですが、格段にレベルアップしていてビックリしました。

成田:自分でもよくわからないんですけど、自分のアイデアが出てきた瞬間、というのがあって。昔の言葉も深く理解できるようになって、自分なりのリズムも生まれてきて、どんどん楽しくなりました。

周防:1カ月の間、いろんな役者さんと芝居をしながら「俊太郎」というキャラクターになっていく時間があったし、なおかつ、旧広瀬座という場所の力もあったかもしれないね。

成田:明治時代の芝居小屋だった場所を、撮影で使わせていただきました。すばらしかったですね。

周防:実際にセットに入って役者さんがその雰囲気を感じることによってガラッと変わることはよくあるんです。

成田:実際にお客さん役のエキストラの皆さんの前で演じる、ということのエネルギーもあったと思います。どうにかして皆さんを楽しませたかったんです。

周防:聴いた瞬間、これはもう、彼にまかせて大丈夫と思いました。

成田:今回、監督が毎日、本当に楽しそうに現場にいらっしゃって。監督を中心に、なんか幸せな空気が流れている現場でした。

周防:今回はね、ホント楽しかった。でも過去にはつらい現場もありましたよ(笑)。たとえば、「それでもボクはやってない」の法廷のシーンのときなんかは、「ごめん、今日はもう誰とも会いたくない」なんて言って、ひとりでセットにこもって弁当食べたりね。今回はみんなでにぎやかにいく、という映画でしたから、いつも以上に役者さん本人が「こうやりたい」というものがあれば、それを尊重しながらおもしろくしていこうという感じでしたね。その人の体から出てくる台詞でないといけないので、逆に役者さんとしての意見、感覚を聞かせてほしいというのもあって。

成田:おもしろすぎてNGなんてことまでありましたよね(笑)。

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