僕は家族がいるのでアメリカを離れられない。4年目の新人の立場ではILMは敷居が高いと思っていましたが、藁(わら)をも掴む思いで応募したんですね。すると映画ではなくテーマパークのほうの仕事で、3カ月間だけ雇ってもらえたんです。

 運が良いことに、そこのスーパーバイザーが僕のことを気に入ってくれたんです。契約を6カ月に延長し、さらにスタッフとして正式に採用してもらいました。

 その後、彼は「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のスーパーバイザーに抜擢(ばってき)されました。僕はILMに拾ってもらった新米です。全然関係のない話だと思っていました。

 ところがある日、メールを開けてみたら、「次の仕事は『スター・ウォーズ』だ」と。4人いるモデラーの一人に抜擢されたんです。読んで手が震えました。

 高校生のとき、ミレニアム・ファルコンはかっこいいとは思いませんでした。奇抜な形ですよね。流線形ではないし、コックピットが真ん中にない。Xウイングのほうがかっこいいと感じました。

 でもジワジワとその良さがわかってきた。世界中のCGモデラーにとって、ミレニアム・ファルコンは最も手がけたい対象です。最後の3部作で担当できたなんて、本当に幸せです。僕はこれをやろうと思ったら、「保険」をかけず、将来のことも考えず突き進んできました。確率が低い中、たまたまうまくいったわけですが、突き進んで良かったと感じています。

(本誌・菊地武顕)

週刊朝日  2019年12月27日号