さらには、車いすでも利用できるベビーケアルームや、託児室も複数設置。「だれでも使いやすいスタジアム」というコンセプトのもとに、設計段階から障がい者や高齢者、子育て世代などの団体を集めて計21回のワークショップを実施し、さまざまな意見を吸い上げて現場に反映した。

 ただ、一般トイレの個室を見ると、便座のふたやウォシュレット、「音姫」のような擬音装置はなし。トイレットペーパーの予備はむき出しで数個ずつ積まれており、「流す」と「SOS」のボタン、手すり、ゴミ箱だけの至ってシンプルなものだった。

コストを抑えたのだろうが、国内外の観客が来ることを考えると、清潔感の維持とトイレットペーパーの持ち出しへの懸念がある。スタッフの目が届きにくい空間で、秩序が保たれるか。

 最後にフィールドにも立つことができた。1層最前列からトラックの9レーンまで、肉声が届きそうだ。記者のコンタクトレンズを通してだが、最上段の席の色まではっきり見える。体感では、フィールドから観客席もやはり近い。大歓声を想像して武者震いした。

 21日はこの競技場でオープニングイベントが開かれる。健常者と障がい者の陸上選手6人のチームによるリレーのエキシビションレースが行われ、国外からは男子100メートルと同200メートルの世界記録保持者、ウサイン・ボルトさん(ジャマイカ)、国内からは2016年リオデジャネイロ五輪男子400メートルリレー銀メダリストのケンブリッジ飛鳥、桐生祥秀両選手ら多数が参加する。また、旧競技場でのライブ経験があるアイドルグループ「嵐」とバンド「DREAMS COME TRUE」による音楽パフォーマンスも予定されている。

 イベント参加者が新生“国立”にどんな感想を抱くか、注目したい。(本誌・緒方麦)

※週刊朝日オンライン限定記事