林:(チラシを見ながら)来年1月は「神田祭」と「明日の幸福」(2~20日 三越劇場)なんですね。「神田祭」のこの雪之丞さんの芸者の黒いお着物、素敵です。

河合:久々に歌舞伎舞踊をやらせていただきます。芸者の黒の衣裳って、裾に波が立っているような荒磯が多いんです。特に江戸前の芸者の場合は、裏が白じゃなくて、共裏じゃないといけないんですよ。

林:左褄をとる(左手で着物の褄をとって歩く)からですね。

河合:共裏で荒磯じゃない柄ってなかなか探しにくかったんですけど、(チラシの写真を指さして)それはうちの旦那が元気だったころ、「獨道中五十三驛」という通し狂言をやったときに、最後の13役早替わりの踊りの中で芸者の役で着てた衣裳なんですよ。「そういえば旦那は藤の衣裳で踊ってたな」と思い出して、松竹衣裳さんに探してもらったら出てきたんです、その下り藤の衣裳が。

林:そうなんですか。私も芸者さんの黒の出の衣裳に憧れて、昔、新橋で「お化け」(節分の夜に行う仮装イベント)のときに着せてもらったことがあります。お座敷を回ったらチップもいただいて、うれしかったです(笑)。女の人だったら一生に一回は着たいと思いますよ。

河合:黒の出の芸者というのがいちばん映えますよね。

林:雪之丞さん、「これからは古典と新しいものを半分ずつやっていきたい」とおっしゃってましたね。

河合:そうなんです。うちの旦那は「ヤマトタケル」とかのスーパー歌舞伎をつくったり、その前は古典作品の復活をやってまして、「歌舞伎は新しいものをやりながら古典もやる両輪の輪が必要なんだよ」と言うんです。400年ぐらい前から歌舞伎はありますけど、新作が常に生まれていたわけですね。

林:はい。

河合:新派もまさしくそうだと思って、1月の「明日の幸福」も、これは初演が昭和29年ですから、古典といってもいいんじゃないかと思いますが、3世代同居の喜劇ですし、2月の「八つ墓村」(16日~3月3日新橋演舞場、6月13?25日 大阪松竹座)とか新しい作品をやりながら、「日本橋」とか「滝の白糸」とか「婦系図」とかも同時にやるというのが、うちの旦那が言っていた「新旧両輪」につながるんじゃないかと思います。

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