皇太子妃時代とは圧倒的に違う声掛けの数と音量に、当初、私は戸惑いを感じた。お代替わりを機にマスコミや人々の対応は変わると想像はしていたものの、これほどまでとは想像していなかった。

 事実、雅子さまが皇后になる直前まで「ご療養中の雅子さまが皇后という重責を担うことできるのか」と疑問視する声は、宮内記者や宮内庁の中にもあった。

 だが時代は令和となって、初の国賓として、両陛下が米国のトランプ大統領夫妻を宮中晩餐会に招いたその日から大きく風向きは変わったように思う。

「陛下が即位されて、白いドレスとティアラをつけた華々しい雅子さまの印象が残る中で、トランプ大統領夫妻と通訳なしで話している皇后さまのお姿は、実に華やかでした」(別の宮内記者)

 国内のメディアはもちろんのこと、米国のニューヨーク・タイムズ紙も、

<トランプ氏訪問で、雅子皇后にスポットライトが当たった>

 という見出しで記事を大きく飾った。

<日本国民は皇后マサコが流暢な英語でメラニア夫人と話すのを見て、感動した>

<皇后マサコのイメージは、外交能力を生かしソフトパワーで厳しい家父長制的な皇室の女性の在り方というものを確立していくかもしれない>

 93年、皇室入りされた翌月に開かれた宮中晩餐会は、雅子さまの“外交デビュー”でもあったが、このときもメディアは雅子さまの語学力とファッションを華々しく報じた。

 だが、宮内庁の中からはこうした雅子さまのお姿を歓迎する声は聞こえてこなかった。

 東京サミットで来日した各国首脳夫妻の中に米国大統領(当時)のクリントン夫妻もいて、トランプ大統領夫妻のときと同様に流暢な英語で会話をなさったのだが、「陛下主催の国賓行事の宮中晩餐会なのですから、陛下よりも長く話されたりせずに、目立たないようにするなど、もう少し気を使われた方が良かったのではないでしょうか」と宮内庁関係者は語っていたものだ。

 こうして、26年後に再び米国大統領夫妻を招いての晩餐会で雅子さまが復活なさったことは、時の流れが感じられた。

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