「取り壊しについて警察の責任者宛てに手紙をしたため直接会って話をした。今、葛藤している。どうしていいかわからない状態です」

 入江さんは集会で警察から数千点に及ぶ遺品のリストを渡されたことについても触れた。

「これが要る、要らないの選択は本当に迷うところです。できることなら全て遺したい。最終的な選択の判断を私がしていいのか。苦しんでいます」

 筆者は10年前から入江さんとさまざまな時間を共有する機会に恵まれた。入江さんを支えているのは悲しみを受け止め悼むというその一念だけなのだと改めて感じている。

「ミシュカの森という場があって、残酷な現実から目を背けない勇気を得ることができました。悲しみを生きる力に変えるべく皆さんと共に考え行動していく。これがグリーフケアという私にとっての希望だったのではと考えています」

 入江さんは12月14日にも2回目となるミシュカの森を作家の平野啓一郎さんらと開催する。(野田太郎)

※週刊朝日オンライン限定記事