今野医師が最初に勧めるのが、このインスリン抵抗性の改善だ。「私は糖尿病じゃないから」と安心しないこと。健康診断などで糖尿病や糖尿病予備軍と指摘されていなくても、加齢の影響や日々の食生活の内容によっては、いつインスリン抵抗性が高くなっても不思議ではないという。

「糖を取り込むインスリンの作用が鈍くなると、血液中に糖が余った状態になります。その過剰な糖は血液中のたんぱく質と結合して、最終糖化産物である“AGEs”という悪玉物質に変わります。これが血管の炎症や酸化の引き金となり、血管を傷つけて、脳への栄養供給を減らしてしまいます。その結果、アミロイドβの沈着を進めてしまうのです」(今野医師)

 インスリン抵抗性を防ぐために控えたいのは、炭水化物や糖類。白米や甘いものは極力避けて、肉や卵、大豆製品などを摂る。

 空腹の時間を持つのも大事だ。栄養を体内に入れない時間を作ることで、細胞内から余分なものが代謝される、オートファジーという状態が生じる。長寿遺伝子が働くという研究もある。無理は禁物だが、夕食から朝食までの間を12時間ほど空ける「プチ絶食」を試してみよう。

「生活環境の改善では特にカビとアレルゲン除去が大事です。洗面所やキッチン、風呂場など水回りは乾燥させておき、エアコン掃除も忘れずに。掃除機でダニやホコリなども取っておきましょう。もう一つ大切なのは歯の健康。定期的に歯科で口腔(こうくう)ケアを受けてください」(同)

 昨年発表された国内の研究では、60歳以上の健康な人でも約2割にアミロイドβが沈着していることが明らかになった。今の食生活と生活環境を変えることは、アミロイドβをためないための、未来への投資ともいえる。自分のため、家族のために、今から始めてみてはいかがだろう。(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2019年12月13日号より抜粋