井上ミノル(いのうえ・みのる)/1974年、兵庫県生まれ。イラストレーター。歴史好きでコミックエッセイに『もしも紫式部が大企業のOLだったなら』など「もしも」シリーズがある。ほかに『ダメダンナ図鑑』など。 (撮影/朝山 実)
井上ミノル(いのうえ・みのる)/1974年、兵庫県生まれ。イラストレーター。歴史好きでコミックエッセイに『もしも紫式部が大企業のOLだったなら』など「もしも」シリーズがある。ほかに『ダメダンナ図鑑』など。 (撮影/朝山 実)

「まわりの人たちに聞くと、海洋散骨でイイねんという人が多いんですよ」。それも「が、イイ」ではなく、「で、イイ」と軽く語る年配男性が多かったという。『まんが墓活 それでどうする、うちの墓?』(140B、1,200円・税抜き)を書いた井上ミノルさんは「何も知らないから、そう言えるんですよね」と苦笑する。

 海洋散骨には、2ミリ以下に粉砕しないといけない、海水浴場や漁場の近くはだめなどの決まりがある。けっこう手間なのだ。

「セレモニー自体は、あっという間。お父さんが言うからそうしたけど、これで良かったんかなあという人もいました」

 本書の企画は、女性編集者の「お墓に興味ない?」との一言から始まった。この編集者は、数年前に亡くなった義母の遺骨の納め先を探しているところだった。さらに、三姉妹で、実家の両親も高齢となって墓問題に直面。井上さんも「うちも姉妹ふたりで、実家の後継ぎはいないし」と共感し、調査に入った。

 よくある疑問の一つに、「○○家之墓」に異なる姓の遺骨を入れていいのかどうかというのがある。婚姻で姓が変わった場合をはじめ、義理の両親などの場合は可能なのかどうか。

「誰が入ってもいいですよと、取材先の住職から言われ、ええっ、そうなんと思いました。知らないことが多くて、驚きの連続でした」

 大阪府堺市の古寺では、さまざまなイベントを開く改革志向の若い住職に会った。区画墓地、樹木墓地、永代供養墓があり、宗派を問わず遺骨を受け入れていた。

「仏教の決まりがあるわけではなく、お坊さんの考え方次第のようでした」

 山奥にある別の霊園の永代供養墓も見学した。「ふつうは『永代』といっても永遠じゃないんです。でも、そこは永遠に置いておけるとのことでした」。継承者が途絶えても「39万円」で管理すると説明され、低価格のために逆に不安になったという。

 東京都品川区にある、安藤忠雄建築研究所がデザインした納骨堂も訪れた。「館内に滝が流れ、地下の部屋なのに光が射し込み、さすが安藤忠雄でした」

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