天海サザエさんは元気だけど、ほとんどのキャラクターに笑顔がなく、まったくもって愉快じゃない磯野家の20年後。助けてタマ！

　盆踊りの夜には、台風が直撃。波平（伊武雅刀）＆フネ（市毛良枝）と共に、久々に食卓に集合するサザエさん一家。照明が暗い。

　せっかく1カ月もかけてCGで表現したという波平の頭の一本毛も、薄暗くてよく見えないよ。

「みんなと同じように生きないと失敗するんだ」と嘆くタラちゃんに、サザエは言う。「タラちゃんはみんなと同じじゃない。タラちゃんはタラちゃんよ！」

　そんな「みんなちがって、みんないい」的ちょっといい話してたら、風がゴーッ。祭りの屋台は吹っ飛び、盆踊りのやぐらが倒れ、磯野家の庭にある木は真っ二つにへし折れる大惨事。

　みんなも笑ってないし、お日さまも笑ってない。「ルールルルルルー♪」を、思わず「北の国から」のメロディーで口ずさむ。

　20年後のサザエさん一家で知る現代社会の苦悩と縮図。って、そんなの見たかったんじゃないんだ。リンゴとミカンをパカーンと開けて踊るサザエさんとタマが見たかったんだよ。

※週刊朝日 　2019年12月13日号

著者プロフィールを見る
カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ／漫画家＆TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV！」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」（新書館）など。

カトリーヌあやこの記事一覧はこちら