ヤクルトのバレンティン (c)朝日新聞社
ヤクルトのバレンティン (c)朝日新聞社
9月19日の阪神戦で本塁打を放ったヤクルトのバレンティン (c)朝日新聞社
9月19日の阪神戦で本塁打を放ったヤクルトのバレンティン (c)朝日新聞社

 ソフトバンクヤクルトの保留者名簿から外れたウラディミール・バレンティンを獲得することが決定的となった。2年総額10億円の条件を用意しているとみられるが、ファンからはこの獲得に賛否両論の意見が。「守備を軽視したかつての巨人の二の舞にならないか」と懸念の声も上がっている。

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 球史に残る長距離砲であることに異論はないだろう。2013年にプロ野球記録を更新する60本塁打を放つなど、来日9年間で288本塁打。今年8月に国内フリーエージェント権の取得条件を満たし、来季から日本人扱いとなる点も大きなメリットだ。

 ソフトバンクは2年連続日本一に輝いたが、今季のペナントレースは最大8.5ゲーム差を西武にひっくり返されて連覇を許した。左ひざ裏の肉離れで柳田悠岐が長期離脱したことや上林誠知の打撃不振、内川聖一の調子が最後まで上がらなかったことなど主力の誤算もあり、シーズンの582得点はリーグ4位。得点力不足がV逸の大きな要因となった。

 チーム事情を考えると、バレンティンの補強は適材適所といえる。今季は打率2割8分、33本塁打、93打点。35歳のベテランだが、4年連続30本塁打以上をマークと長打力に陰りは見えない。また、デスパイネ、グラシアルと同じ中南米出身の選手たちと戦えるのも心のよりどころになるだろう。3人が組むクリーンアップは12球団屈指の破壊力になることは間違いない。

 一方で、大きな戦力アップにつながるかというと懐疑的な見方も。スポーツ紙担当デスクはこう分析する。

「バレンティンの打撃は魅力ですが、ネックは左翼の守備です。動きが怠慢なので二塁走者が高い確率で本塁にかえってくる。本来なら指名打者で起用したいのですが、デスパイネがいるので、左翼で使わざるを得ない。他球団が今オフにバレンティンの獲得に乗り気でなかったのはこの守備面でのマイナス面を懸念したからです。得点力はアップしますが、失点も増えるリスクがあります」

 実はソフトバンクファンからも、

「バレンティンが入ると、打撃偏重になってバランスが悪い。昔の巨人みたいに4番打者ばかりそろえて機動力、守備がからっきしみたいにならないといいけど」

「ソフトバンクは育成をうまくやってきたチーム。若手の出場機会が限られるし、本当に必要な補強だったのか」

 など獲得に疑問の声が少なくない。選手層は厚くなったが、スタメンで出られる野手は指名打者を含めて9人のみ。工藤監督の手綱さばきが注目される。(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事